マグノリアとは、モクレン科モクレン属の植物の総称です。映画や漫画のタイトルにも使われていたりするので、聞いたことがある人は多いと思います。
原産は中国ですが、日本でもよく見かけるポピュラーな樹木の花で、3月~4月ころに大きな花を咲かせています。日本での歴史も古く、平安時代にはもう書籍に記録があります。
現在も東京などでも公園や街路樹としてよく見かける花で、桜より早く春の訪れを知らせてくれます。麗らかな春の日に、炎のような形の花を空に掲げているモクレンの花は、大ぶりで見ごたえもありますね。
日本ではマグノリア=モクレンというイメージですが、海外ではちょっと違う印象のようです。
「マグノリア」についてご紹介します。
マグノリアの基本知識
- 学 名 :Magnolia liliflore
- Magnolia quinquwpeta
- 科・属名:モクレン科モクレン属
- 原 産 地:中国
- 開 花 期:3から5月
園芸では、マグノリアと言えばシモクレン(紫木蓮)を表します。樹木の高さは3から5メートルの低木で、落葉樹で春になると葉と花を同時につけるのが特徴です。春に5センチほどの、外側が濃紫で、内側が薄紫色の花をつけ、花弁が開ききらず、炎のような形をしています。
つぼみは頭痛や鼻炎に効く「辛夷」という薬として古くから伝わっていました。現代でも使われていて、漢方ではつぼみがそのまま乾燥したものが処方されたりします。
日本へは平安時代に中国からもたらされ、庭木や街路樹として、人々の目を楽しませてきました。
白木蓮、紫木蓮、星木蓮など花の色や形によって非常に多くの種類があり、アメリカ、アジアに約90種ほどが分布しています。現在の日本では、中国からもたらされたものも、北アメリカからもたらされたものも、多くの種類が生息しています。
モクレンの歴史は非常に古く、人類よりずっと以前に誕生したことが分かっています。
地球上で一番古い花木といわれており、一億年前からすでに今のような形であったことが化石から判明しています。日本でも白亜紀頃のモクレンの化石が見つかっており、現在の私たちのそばにある花木の祖先だと考えられています。
名前の由来
和名の木蓮は、花が蓮の花に似ていることを元にしています。かつては蘭の花に似ていたということで木に咲く蘭として、「木蘭」(もくらん)と呼ばれていたこともあるようです。
属名の学名「Marnolia」は、フランス人植物学者、Pierre Magnol(ピエール・マニョル)氏の名前からです。
英語でも学名と同じ「Magnolia」(マグノリア)と呼ばれます。木蓮花、玉蘭など、さまざまな別名もあります。
種類と花言葉
日本ではマグノリアと言えば、モクレン、それもシモクレンを示すと先述しましたが、そのほかにも有名なモクレンが自生していますので、代表的なものを花言葉と一緒に紹介します。
モクレン全体の花言葉
「自然への愛」「崇高」「持続性」「威厳」
自然への愛という花言葉は、春に花と葉を一緒に芽吹かせることに由来しています。
モクレンは恐竜が生きていた時代から存在し、現在も変わらず花を咲かせていることから、持続性という花言葉になりました。
ハクモクレン(白木蓮)
中国で最も愛されているモクレンの種類です。「望春花」の別名があり、中国で「マグノリア」というとハクモクレンを表します。
華やかで、上品な甘い香りの美しい白い花をつけます。花持ちはあまり長くなく、2、3日で見ごろを終えてしまいます。花は必ず上を向き、暗くなると花弁をつつましく閉じます。3月から4月頃に花を咲かせる、モクレンの中では一年で一番早く花が咲く品種です。葉より先に花が咲き、大きいものでは20メートルにもなる樹木です。
・ハクモクレンの花言葉
「気高さ」「荘厳」「高潔な心」「慈悲」「自然な愛情」
「気高さ」はモクレン属の中でも、白木蓮につけられた花言葉だとされています。
3月24日の誕生花です。
シモクレン(紫木蓮)
日本で一般的にモクレンと言ったら、シモクレンをさします。つまり「マグノリア=モクレン=シモクレン」です。
咲き始めはハクモクレンより少し遅い3月下旬ころからです。4メートルほどの樹木で、原産は中国ですが、すっかり日本にも定着しています。
・シモクレンの花言葉
「自然への愛」「高潔な心」「崇敬」
「高潔な心」は、樹木の上に咲くハス(蓮)に似た、上品に香る様子につけられたそうです。中国では高貴な花とされ、宮中や寺院にこぞって植えられ、日本でも寺院などで見ることができます。
1月8日、2月19日、5月7日、7月4日の誕生花です。
サラサモクレン(更紗木蓮)
シモクレンとハクモクレンが交配して生まれた種類です。2つの木の特徴がバランスよく合わさっています。
淡いピンクの花を、3月から4月頃、桜が咲くころに一緒に咲かせます。そのため別名を「桜木蓮(サクラモクレン)」といいます。
これは個別の花言葉はありません。木蓮全般を表す花言葉と、シモクレンとハクモクレンのいいところを交配しているのですから、花言葉もいいところをとってもいいでしょう。
コブシ(辛夷)
別名・田打桜とも呼ばれます。コブシが咲く頃に、田植えを始めたといわれているからです。
日本原産のモクレンの仲間で、花はほかのモクレンに比べて小さめで、ハクモクレンと同時期に咲き始めます。10メートル以上になる高い木で、園芸はもちろん、切り花としても人気です。
コブシは漢字で書くと「辛夷」と書きます。しかし、中国では「辛夷」はシモクレンのことです。混乱しないようにしましょう。
コブシの樹皮は、煎じてお茶のように飲む風邪薬として役立ちました。
・コブシの花言葉
「愛らしさ」「友情」「友愛」
「愛らしさ」は、コブシのつぼみが子供の握りこぶしのような形であることからつけられたそうです。純白で濁りのないさまが「友情」と「友愛」を表すとされています。
3月8日、3月24日の誕生花です。
タイサンボク(泰山木)
泰山木、英語ではエバーグリーンマグノリアと呼ばれます。北米原産のモクレンの仲間です。
アジアのモクレンとは違い、エバーグリーンの名の通りの常緑樹です。葉は落ちることなく、花は6月から7月の夏に咲きます。大きな白いお椀型の花が、盃に例えられ、「大盃木」それが次第に「泰山木」「大山木」に変化したといわれています。
日本にも明治時代には輸入されていて、今でも新宿御苑や昭和記念公園などの大きな公園で見ることができます。
アメリカミシシッピ州とルイジアナ州の州花とされています。「マグノリア」と言えば、アメリカではこのタイサンボクを表します。「マグノリア」という映画でも、使用されているのはタイサンボクの花でした。
シモクレンもハクモクレンも、上品な甘い香りがしますが、香料業界でのマグノリアはタイサンボクです。タイサンボクの天然精油はイランイラン調の甘く優雅で、ちょっと蠱惑的な香りです。高級香水などに使用されます。
・タイサンボクの花言葉
「前途洋洋」「壮麗」
人生の展望が開けるさまの前途洋々と、大きく立派な様子を表す壮麗は、タイサンボクの立派な樹木と、大きな香りのいい花の様子にちなむとされています。
6月8日の誕生花です。
モクレンの花言葉の由来
モクレンにはいろいろな花言葉がありますが、花言葉の由来となった伝説があるので紹介します。
中国三大宗教の一つ、道教がベースになった話で、登場人物には「高上玉皇大帝」という神様がでてきます。これは道教の事実上の最高神である神様です。天界や地上のみならず、地下や地底に住むものまで、あらゆるものを支配する神様で、現代でも人々から広く崇拝されています。
高上玉皇大帝、玉皇上帝と呼ばれますが、すべての神々と仙人に位と与え、身分を定めた最高神であり、「西遊記」でも「高天上聖大慈仁者玉皇大天尊玄穹高上帝」の名で登場し、孫悟空に斉天大聖の位を与えています。
お話しは、その玉皇上帝の一人娘の悲恋話です。
モクレンの伝説
玉皇上帝の一人娘が年頃になり、北の国の王子に恋をしました。しかし、最高神の娘である以上、勝手な恋愛ができようはずもなく、父の見染めた相手との結婚の話は進んでいってしまいます。
娘はそんな政略結婚のような将来を憂いて、家を飛び出しました。家を飛び出し、向かった先はもちろん北の国王子のもと。ですが、北の国の王子は、すでに別の女性と結婚していたのです。
娘はそれを知って絶望し、自殺してしまいます。
北の国の王子は、娘の葬儀に出席したときに初めて、玉皇上帝から、娘が自分に恋焦がれて死んだことを聞かされました。北の国の王子は、何故娘のそこまで深い想いに気が付くことができなかったのだと、自責の念にかられ、葬儀のあと、なんと自分の妻を殺してしまったのです。
失恋の絶望から命を絶った娘と、その娘の気持ちに気がつくことができず妻を殺した王子、そして何もわからないまま、夫に突然殺されてしまった王子の妻を、玉皇上帝は哀れに思いました。
そもそも、自身が、娘の意に沿わない結婚を進めたのがきっかけなので、玉皇上帝はせめてもの償いとして、娘と、王子の妻の墓から花を咲かせました。
娘の墓からは白木蓮、王子の妻の墓からは、紫木蓮が咲いたと言われています。
この伝説から、木蓮に「高潔な心」「慈悲」という花言葉がつけられたとされています。
まとめ
いかがでしょうか。
マグノリアとひとくくりにされても、日本ではシモクレン、中国ではハクモクレン、北米ではタイザンボクと、同じモクレン科モクレン属の植物でも、それぞれの地域で指す花が違いました。
それぞれに違う特徴があり、違う名前があることをお分かりいただけたと思います。
モクレンの開花期は、日本では3~5月が開花期です。どこかで見かけたときに、それぞれの特徴から見分けることができそうですね。美しい花顔と、強くはありませんが、甘い上品な香り、つぼみが必ず北を向いていることから「コンパスフラワー」の別名も持つモクレン。
春になったらその様子を、ぜひ直に確かめてみてください。
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