「福寿草(フクジュソウ)」は長寿と幸福の花として知られています。
冬から春にかけて黄色の綺麗な花を咲かせ、その花びらの明るさや華やかさから、縁起の良い花として古くから親しまれてきました。
お正月や縁起の良いイベントの時期に飾られることでも有名ですね。花の色も、実は青白いものから桃の色の花までさまざまあり、多くの種類の福寿草で彩られた様子はとてもきれいなものです。
今回は、そんな福寿草の花言葉についてご紹介していきたいと思います。おめでたいことの象徴ともされる福寿草ですが、どんな花言葉を持っているものなのでしょうか?
福寿草ってどんな花?
福寿草は、キンポウゲ科フクジュソウ属(アドニス属)の花で、昔から「縁起の良い花」として親しまれてきた特徴があります。また、園芸品種としても昔から親しまれてきています。
和名の福寿草は「幸福」と「長寿」を合わせてつけられた名前と言われています。花言葉もそれに由来するものが多いのも特徴的です。
福寿草は英語名を「アドニス」と言いますが、この由来はなんとギリシア神話に登場する少年の名前からとられたものになります。後述しますが、日本ではおめでたい花として有名な福寿草にも、実は少し悲しいエピソードが隠れている部分もあるのです。
◆和名:福寿草(フクジュソウ)
◆別名:元日草(ガンジツソウ)、朔日草(ツイタチソウ)
◆科・属:キンポウゲ科フクジュソウ属(アドニス属)
◆英名:Amur adonis(アムール・アドニス)
◆原産:シベリア、日本、中国、朝鮮半島
◆開花:1月~3月
ちなみに福寿草は、年末年始の折に、松竹梅などと一緒に植えられた植木鉢がよく販売されるものです。元日草(ガンジツソウ)、朔日草(ツイタチソウ)という別名を持っているのは、このような部分が由来しているのですね。
福寿草の「良い花言葉」
福寿草には花言葉がたくさんあります。それらには良い意味を持つものもあれば、悪い意味や悲しい意味を持つものまでさまざまです。
まずは福寿草の良い花言葉について意味を確かめていきましょう。
祝福、幸福
福寿草のイメージそのものとして「幸福」「祝福」などの花言葉があります。
福寿草は新春を彩る縁起の良い花としてよく知られていますから、幸福や幸せを呼び込むものの象徴とされています。
また、お正月などの時期ではなくても、幸せを招きたいときにはぜひ福寿草を家に飾っておきたいところです。その証拠に、福寿草の花言葉は「幸せを招く」という言葉も広く知られています。
さらに、「永久の幸福」という花言葉もあげられることがあります。福寿草は黄金のきれいな花びらをつけるものです。黄金は永遠に色あせない輝きを連想させます。永久の幸福という花言葉がついたのも、きれいな花びらの色に由来しているのでしょう。
希望
「希望」という言葉も、福寿草の花言葉の一つです。
祝福されている状態、幸福を感じているときは未来に希望を持っていることの証にもなります。
福寿草がつける黄金の花びらは、見ているだけで明るい気持ちにさせてくれるものです。そんな花やかに咲き誇っているさまを、希望の象徴としてとらえることも多いのです。
未来への希望を込めて、頑張っている人やこれから進学や就職を控える人に贈るのも良いですね。
極限の愛
福寿草には「極限の愛」という花言葉もあります。花やかに咲き乱れる福寿草のそのさまが、極限にまで大きくなった愛情を示しているという考え方からでしょう。
もともと花言葉は「愛」に関するものが多く、それは花のきれいな姿が人の愛情を連想させるためだと言われています。恋人に強い愛情をアピールするため、プレゼントすると喜ばれるかもしれませんよ。
福寿草の「悲しい花言葉」
福寿草には悲しい花言葉もあります。幸福や長寿の象徴とされる福寿草ですが、あまり悲しい花言葉はイメージがつかない人も多いでしょう。
福寿草には「悲しき思い出」という花言葉があるのです。これは英語の花言葉で、「sorrowful remembrance」、訳して悲しき思い出ということです。
福寿草にはなぜこんな花言葉がついているのでしょうか?このことは、実はギリシア神話に由来しています。福寿草の英語名「アドニス」がギリシア神話に由来するのもこの花言葉関係しています。
「悲しき思い出」の由来となったギリシア神話とは?
では、「悲しき思い出」となったギリシア神話とはどんなお話なのでしょうか?
ギリシャ神話にはアドニスという名前の美少年の王子が登場します。王子アドニスは愛と美の女神アフロディーテに非常に愛された少年だったと言われています(上の極限の愛というのは、アフロディーテがアドニスに注いだ極限の愛情から由来しているとも言われます)。
アドニスは狩りが好きでした。そんなアドニスを溺愛しているアフロディーテはアドニスを心配し、「猪のような獰猛な獣に近づいてはなりませんよ」とアドニスに忠告をします。
しかし…残念ながらアドニスはこの忠告を受け入れず、猪を狩りに行ってしまいます。そしてその結果アドニスは、狩りをしている途中、猪の牙に突かれて死んでしまうのです。
アフロディーテはひどく悲しみます。アドニスを忘れたくないアフロディーテは、アドニスの流した血に「神の酒」をそそぐことにしました。するとそこから赤い花が咲きます。
これが古代の福寿草と言われているのです。福寿草=アドニスというのは、このギリシア神話から由来しているのです。そして「悲しき思い出」という花言葉も、この悲しいギリシア神話からきています。
ちなみに古代の福寿草は黄金の花びらではなく、赤い花びらが一般的でした。赤い福寿草?と思ったかもしれませんが、古代と現代では福寿草の色も違ったのです。
アネモネ=福寿草?
福寿草と同じキンポウゲ科の花に、アネモネという花があります。
アネモネは福寿草とは別の花ですが、実はこのギリシア神話の中で古代の福寿草と古代のアネモネは混同してしまっているのです。
アドニスの流した血から福寿草が咲いたことにより、福寿草の英語名はアドニスと名付けられたことは分かりました。
しかし、いつの間にか神話の中で福寿草は、別の花であるアネモネにすり替わってしまっている説もあるのです。
アドニス王子が血を流し、そこから「アネモネ」を咲かせた…という神話が語り継がれ、古代の福寿草と古代のアネモネは同じ花として混同されてしまっているという不思議なエピソードがあるのです。
福寿草にまつわるアイヌの伝説
実は福寿草にはアイヌでも伝説があるのをご存知でしたか?
アイヌでは福寿草のことを「福寿草」ではなく、「クノウ」という名前で呼びます。この由来にも、実はとても悲しい伝説が隠されています。
その昔、蝦夷(=北海道)にはクノウというとても美しいお姫様がいました。
姫にはやがて結婚の話が持ち上がり、お婿さん候補として土竜の神様がふさわしいということになったのです。土竜の神様を婿として探してきたのはクノウ姫の父親で、父親からこの話を聞いたクノウ姫は、考えた末、結婚の話を承諾することになります。
しかしクノウ姫は、実はこの結婚に対して乗り気ではなかったのです。
一旦は結婚を承諾したものの、式が迫るにつれて「結婚したくない」という思いは募るばかりです。そこでクノウ姫は、なんと結婚式の最中にどこかに消えてしまうことになります。
婿である土竜の神様はクノウ姫を探しますがなかなか見つかりません。やっと見つけたと思ったら…クノウ姫は千草八千草の花の中に隠れてずっと泣いていたのです。
結婚式の最中にいなくなられてしまって恥をかかされてしまった土竜の神様は、当然怒りました。また、せっかく婿を探してくれた父親に対して不誠実な行動をとったことに対しても、怒りました。
土竜の神様は、「お前は父親の厚意に背き、結婚式の最中にいなくなったことで天地を騒がせることになった。もう二度と天上の宮に帰すことはできない。罰として、ずっと地上で草となり、踏みにじられる存在でいるがいい」とクノウ姫に言ったのでした。
そして土竜の神様はクノウ姫を殴り、蹴り、地上に踏みつけました。
その結果…クノウ姫は「福寿草」という花になってしまったのです。
このような伝説から、福寿草はアイヌで「クノウ」と呼ばれているのです。とても怖い、そして悲しい言い伝えですね。福寿草は「幸福」をイメージする縁起の良いお花ですが、実はこんな逸話もあるのだと思うと、少しイメージも変わりそうなものです。
福寿草の毒に注意!
福寿草には実は毒があるのをご存知でしたか?縁起物として知られる福寿草なので、毒があるなんてまったく考えにくいですよね。
ちなみに福寿草を「縁起の良い花」として扱っているのは実は日本くらいで、西洋や中国などで福寿草は春告げの花とされています。普通の春告げの花ということなら、「悲しき思い出」という花言葉がつけられるにいたるのも分かりますよね。
そして福寿草の毒ですが、花びら自体には毒はありません。毒性があるのは茎や葉の部分になります。
どれくらい強い毒なのかと言うと、摂取する量によっては死に至る可能性も出てくるほどの毒性です。あまりないかもしれませんが、きれいな花だと思って食べてしまったりするようなことはないように気をつけましょう。また、子供にも近づけないようにすることが大切ですね。
まとめ
今回は福寿草の花言葉についてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
幸福や長寿などのイメージも強い福寿草ですが、意外と福寿草にまつわるエピソードは悲しい者や複雑なものが多く、驚いた人も多いでしょう。花の意味や花言葉の成り立ちを知ると、花を観賞するうえでも違った見方ができそうですよね。
ちなみに福寿草は昔100種類ほどの種類があったのですが、今では10種類ほどに減ってしまったと言われています。今でも実はそんな残念なエピソードもあるのですね。
しかし福寿草は私たち日本人にとって幸福やお正月などの縁起の良い時期を象徴するものとしてなじみ深いものです。ぜひ幸せや希望を呼び込みたいときは、福寿草の花を眺めて過ごしてみるのも良いかもしれませんね。
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