曼殊沙華という花を知っていますか?見た目がとても華やかで妖艶な雰囲気を醸し出している花で、お彼岸に咲くことから和名を彼岸花といいます。
葉や枝のない、まっすぐに伸びた茎に突然一つの大きなあでやかな色形の花が咲く光景は、見る人にとても強烈な印象を与えます。そのため「持ち帰ると火事になる花」「幽霊花」「地獄花」「死人花」など、なぜか死を連想する不吉な異名がたくさんあることでも有名な花です。そんな曼殊沙華を調べてみました。
曼殊沙華とは?
和名、彼岸花ともいわれる曼殊沙華という花は、その名のとおり、彼岸の時期に満開の季節を迎えます。また、毒を持つ花なので、この花を食べると彼岸(死)を意味することから、この名前が付いたともいわれています。日本では歌謡曲のタイトルや映画の題材にも使われていたりするので、赤く妖艶で華やかな花という印象があると思います。
また曼殊沙華という名は、法華経の仏典にある、仏語(サンスクリット語)で白く柔軟な性質を持っている「天界に咲く花」という意味に由来しています。彼岸の時期に満開に咲くこの花を、昔の人がそのような天界の花と重ね合わせて考えたのでしょう。
そんな曼殊沙華の学名は、Lycoris Radiataといいます。ヒガンバナ科・ヒガンバナ属に分類される球根植物で、英名はSpider lilyといいます。学名から別名をリコリスともいわれますが、ヨーロッパなどでもハーブとして知られているリコリス(甘草)とは別物ですので、注意が必要です。甘草のリコリスは、マメ科カンゾウ属の植物です。
曼殊沙華は、赤、白、黄色、クリーム色などのさまざまな色があり、7月から10月が開花時期で、特に多くが彼岸の時期に満開を迎えます。
また、和名の彼岸花という名のほかにもさまざまな異名があります。幽霊花、地獄花、死人花、捨子花、剃刀花、狐花毒花、狐花、葉見ず花、見ず雷花、痺れ花、天蓋花、狐の松明、レッドスパイダーリリー、ハリケーンリリー、マジックリリーがその代表的な異名です。
曼殊沙華は、原産国が日本や中国で、広い地域で自生し、花が咲いてから葉が伸びるという変わった特徴を持つ花です。夏の終わりごろから秋にかけて、30センチから50センチの枝も葉もないような茎がどんどん伸びて、そこに一つだけ鮮やかに咲く曼殊沙華は、その特殊な性質や咲く時期などから古来の人々は、恐れを感じていたそうです。そのため不吉な迷信や不吉な異名が付くようになりました。
最近では品種改良が進み、彼岸の時期以外にも満開を迎える曼殊沙華もでてきました。また「雨後の彼岸花」といわれるように、大雨の後に一斉に花が咲き始めることがあり、曼殊沙華の見ごろは大雨の後といわれています。
また昔から迷信として、曼殊沙華を家に持ち帰ると火事になるといわれています。それは曼殊沙華の花の形が燃える炎のように見えてしまうことから、このような迷信が伝わったと考えられています。
曼殊沙華は毒花
曼殊沙華は、全草有毒の毒花です。間違って摂取すると、吐き気や下痢などを引き起こし、場合によっては、中枢神経に麻痺を起こし死に至る可能性があるほどの有毒生を含んでいます。
曼殊沙華が墓地や水田のあぜ道などに見られるのは、人がこのような毒の性質を知っていて、ネズミや虫などの有害な動物や害虫をこの花で防ぐ目的で植えたといわれています。
ただ、毒花にも関わらず、人の目に触れやすいところに植えてあること、花が終わった後に伸びてくる葉などがアサツキやノビルなどの野草に似ているため、昔から、人が間違って食べてしまい、中毒症状を起こすことも多々あったそうです。
代表的な品種
リコリス・アルビフローラ(白花曼殊沙華)
白い花びらを持つ曼殊沙華の品種です。花が咲いた後に葉が出てくる品種で、花びらは緩やかなうねりで外側に向かって沿っている特徴があります。
オーレア(ショウキラン)
黄色の花びらを持つ原種です。花が咲いた後に葉が出てくる品種です。花びらは緩やかなうねりで外側に向かって沿っている特徴があります。九州、四国地方によく自生しています。
ヒガンバナの花言葉
秋の季語でもある曼殊沙華は、その花言葉も秋の雰囲気を漂わせています。色別にも花言葉はありますが、まずは共通する曼殊沙華の代表的な花言葉を見てみましょう。
「また逢う日を楽しみに」「再会」「転生」
彼岸の時期に咲く花から、死者の魂が現世に帰ってくることで、再会を楽しみ、そして彼岸が終わると次の彼岸まで再会を楽しみにしているという意味からつけられた「また逢う日を楽しみに」「再会」「転生」という言葉です。これらの花言葉は、もう一つの意味として、自分が死んでも生まれ変わって、次の世で会いたいという、日本人の死生観である、輪廻転生を意味している言葉であるとも考えられています。
「独立」
花が咲いた後に出てくる、葉や枝のない、一本のまっすぐに伸びた茎の凛とした姿や茎がまっすぐに伸びてその先に立派な1つの大きな花を咲かせるというイメージが、「独立」という花言葉の由来となっています。
「あきらめ」
あきらめという花言葉の由来ははっきりとわかっていないそうです。おおよそでは、有毒植物である曼殊沙華を摂取した場合に、死を連想し、生をあきらめなさいという意味でしょうか?「あきらめ」から死=(イコール)彼岸、そして彼岸に咲く花ということから、このような花言葉ができたといわれています。
「悲しき思い出」
曼殊沙華が彼岸に咲く花ということから、彼岸で亡くなった人を供養することを連想し、悲しい思い出という花言葉が生まれたといわれています。彼岸には亡くなった人を供養するため、思い出す人も多く、毎年曼殊沙華の花を見ると、亡くなった人のことを思い出して悲しい思いを思い出してしまうことに由来しているのでしょう。
曼殊沙華の色別の花言葉
曼殊沙華には、色別にも定められた花言葉があります。どのようなものなのでしょうか?
赤色曼殊沙華の花言葉「情熱」「想うはあなたひとり」
赤い花の形が独特な燃えるような形であることや、赤い色から強烈な印象を与える赤い曼殊沙華の花にそのイメージから「情熱」という花言葉がつけられたといわれています。
また同じように赤い色から情熱を連想し、誰かを一途に思い続けるイメージを重ね合わせ「想うはあなたひとり」という花言葉ができました。またこれは死者が現世に戻ってくる彼岸の時期に咲く花とも合わせて、亡くなった人を一途に想う気持ちも込められています。
白色曼殊沙華の花言葉「また会う日を楽しみに」「思うはあなた一人」
白色の曼殊沙華は、赤に比べ、印象がおとなしく静かであることから、その意味も静かだけど、純粋でまっすぐな思いを表しているといわれています。
曼殊沙華共通の花言葉にもありますが、彼岸に合わせて亡くなった人をまっすぐに思い続ける気持ちや輪廻転生を信じ、生まれ変わってまた会えるのを楽しみにする気持ちを表した花言葉です。
黄色曼殊沙華の花言葉「追想」「悲しい思い出」「深い思いやりの心」
黄色の曼殊沙華の花言葉は、「深い思いやりの心」や「追憶」です。ほかの曼殊沙華の花言葉と同様に、彼岸を連想し、死者に対する思いを感じる花言葉ではありますが、白や赤の曼殊沙華とは違い、強烈な印象はあたえません。しかし明るい色味から連想する花言葉でもないことから、より精神的な意味の深さの悲しみや思いを感じさせる花言葉になります。
その他の色の曼殊沙華の花言葉
曼殊沙華には、そのほかさまざまな色の種類があります。オレンジやピンク、クリーム色といった曼殊沙華も存在しています。あまり市場では見かけないので、どこかで見つけたらとても幸運かもしれません。花言葉は知られていません。もう少し多く市場に出回るようになると花言葉がつけられるかもしれません。
曼殊沙華が誕生花の日
曼殊沙華の花が誕生花である日にちは、9月13日、9月20日、9月23日、11月15日が定められています。この日が誕生日の人には、きれいな曼殊沙華の花を贈るのも素敵かもしれません。
曼殊沙華の有名な場所
では、ここで曼殊沙華の花で有名な観光地を紹介しましょう。
曼殊沙華の開花時期は、7月から10月になります。秋のお彼岸を挟んで前後が一番の見ごろといわれています。そのころ名所といわれる場所では、各地、曼殊沙華が咲き乱れ、華やかで幻想的な雰囲気を醸し出しています。
ひだか巾着田(埼玉県日高市)
曼殊沙華の花が一望できる場所として有名なのは、埼玉県日高市にある、「ひだか巾着田」です。ここでは、曼殊沙華のほかにコスモスや菜の花も自生しているので、季節折々の草花が楽しめますが、特に曼殊沙華は、一斉に満開になるとあたり一面まるで真っ赤なじゅうたんを敷き詰めたような情景が楽しめます。そのあでやかで妖艶な雰囲気から、彼岸の時期には観光客でいっぱいになります。
早川渕彼岸花の里(群馬県太田市)
早川渕彼岸花の里では、地元のボランティアの人達が10万本の曼殊沙華の花を育てています。
個人の私有地でのボランティア管理なので、とても温かみのある曼殊沙華の花畑を見ることができます。
西蓮寺(茨城県行方市)
西蓮寺は782年に創建された有名なお寺です。常陸の高野山としても知られています。そんな西蓮寺には、いたるところにボランティアの人達によって曼殊沙華の花が植えてあります。そのため、彼岸の季節にはきれいな曼珠沙華の花が楽しめます。
常泉寺(神奈川県 大和市)
常泉寺は、創建1588年の曹洞宗のお寺です。神奈川県の花の名所100選や、曼殊沙華の関東三大名所の一つといわれていて、花のお寺としても知られています。
常泉寺の境内には、曼殊沙華と一緒にたくさんの小さなお地蔵様がいらっしゃっていて、ほほえましい光景を醸し出しています。その光景は訪れた人の楽しみの一つ、魅力の一つとなっています。
まとめ
いかがでしたか?曼殊沙華は、彼岸の時期に満開になる妖艶で不思議な怖い花と思われていましたが、実は仏教に由来する名前のお花だということがわかりました。
花言葉も日本の死生観をあらわす輪廻転生をもとに、死者の魂に寄り添う人の心をあらわす言葉が多くつけられていましたね。
古く怖い迷信などよりも、曼珠沙華の素敵な花言葉を心に秘めながら、彼岸の季節に故人を想い、その大切な思い出に浸ることのできる貴重な時間を思い出させてくれる曼殊沙華の花は、今を忙しく生きる私たちにとってとても必要な花なのではないでしょうか?
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