離婚せずに家庭内別居を続ける理由とは?子供への悪影響を紹介!

現在の日本の離婚率は35%前後と言われており、愛し合って結婚したはずの夫婦の3組に1組が何らかの理由で別々の人生を歩むことを選択しているそうです。

そんな中、様々な事情で離婚に踏み切れず、ひとつ屋根の下に住んでいるにもかかわらず赤の他人同士のような生活を続けている、いわゆる「家庭内別居」の状態に陥る夫婦も年々増えているといいます。

人と人との結びつきというのは案外脆いもの。結婚に憧れを抱いている人たちからすれば信じがたい話かもしれませんが、些細なことをきっかけに生まれた小さな溝が、やがて取返しもつかないほど大きくなってしまうことは、夫婦生活では珍しくないのです。

そこで今回の記事では、この「家庭内別居」の状態について詳しく調べてみました。離婚を選択しない理由や、子どもたちに及ぼす影響、家庭内別居中のトラブル対策などについてご紹介していきたいと思います。

「家庭内別居」とは?

離婚成立が間近だと伝えられているブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリー。かつては世界のビッグカップルと呼ばれた二人も、実は家庭内別居の状態にあったと言われています。

この「家庭内別居」とは、そもそもどのような状態のことなのでしょうか。

家庭内別居の定義

「家庭内別居」とは、互いの心がすでに離れており、夫婦としての関係は破綻しているにもかかわらず、様々な事情で離婚を選択せず同居を続けている夫婦のことを言います。

家庭内別居には、法律上の明確な定義が存在するわけではありません。

したがって、本人たちが「家庭内別居をしている」と思っているのであれば、その期間や程度はどうあれ家庭内別居をしている状態にあると言えるのです。

家庭内別居をしている夫婦の実状

では、家庭内別居の状態に陥った夫婦は、家庭の中でどのように過ごしているのでしょうか。一例をご紹介いたしましょう。

  • 夫婦で同じ部屋にいることがない
  • 夫婦間の会話がまったくない、目も合わさない
  • お互いの存在を無視している
  • すれ違う時に体をそらすようにする
  • 性生活がない
  • 食事も洗濯も別々
  • お互いに相手に対して否定的な感情しか湧かない

もし二人が夫婦でなければルームシェアをしているような感覚になるのかもしれませんが、何らかの理由で心が離れてしまった者同士がこのような生活をしているのですから、当然大きなストレスがかかります。

しかし、経済的な問題や子どもへの影響、世間体など、様々な理由から離婚に踏み切れずにいる夫婦も多いのです。

「仮面夫婦」との違い

相手のことが嫌い、離婚したい・・・などの本音を隠しながら、まるで夫婦という名の仮面を被ったように形式上の夫婦生活を続けている夫婦のことを「仮面夫婦」といいます。

仮面夫婦と家庭内別居をしている夫婦との大きな違いは、対外的な立ち振る舞いです。

仮面夫婦は近所の人たちや親族の前ではそれなりに仲の良い夫婦を演じようとしますが、家庭内別居の状態にある夫婦は基本的に二人でいること自体がないので、人前で仲の良いふりを見せるようなこともありません。

ただ、どちらにしても「夫婦関係はすでに破綻しているが、何らかの理由で離婚にはいたっていない」という状態であることは共通しており、そういった意味では仮面夫婦も家庭内別居の形のひとつと言えるのでしょう。

あえて家庭内別居を続ける理由とは?

すでに関係が壊れてしまった相手とひとつ屋根の下で暮らしていくのは、想像以上の苦痛をともないます。円満な夫婦生活を送っている人や、まだ結婚をしていない人にとっては、こんな生活がお互いにとって意味のあることなのか疑問に思うことでしょう。

しかし、先ほどもお伝えしたように、様々な理由から離婚には踏み切れず、あえて家庭内別居という形を選択する人も多いのです。

家庭内別居を続ける理由、もっとも多いのは「子ども」

生活情報誌『ESSE』では、夫婦関係に悩みを抱える読者100名を対象にアンケートを実施し、「家庭内別居を続ける理由」を調査しています。

  • 家庭内別居を続ける理由
    1位・・・子どものため(29人)
    2位・・・経済的な事情(22人)
    3位・・・気持ちが踏みきれない(13人)
    4位・・・夫が離婚に応じない(8人)
    4位・・・周囲の目が気になる(8人)
    (※複数回答あり)

(参照元:ESSE-online

もっとも多かった意見は、やはり「子どものため」

最近では離婚による「ひとり親家庭」も増えていますが、世間にはそうした家庭で育つ子どもたちをどこか否定的に見てしまう人も少なくありません。学校でいじめや差別の対象となってしまう子どももいるでしょう。

誰しも自分の子どもにはそんな辛い思いをさせたくないはず。子どものことを考えたら、形式上だけでも夫婦生活を継続することが最善策であると考える気持ちもわかりますよね。

また、「自分ひとりでは子どもの学費を払うことが不可能」など、さらに経済的な理由が付随しているケースも多いようです。

家庭内別居を続けるメリット&デメリット

物事には必ず二面性が存在すると言いますが、家庭内別居についても同じで、実は悪い面ばかりでなく良い面もあるようです。

では、家庭内別居におけるメリット・デメリットとは、具体的にどのようなことなのでしょうか。

家庭内別居を続けるメリット

◆経済的な負担がかからない
別居や離婚となると、当然のことながら今後は自分自身で生計を立てなくてはなりませんね。もし子どもを連れて家を出るとすれば、その分お金も必要になります。これまで夫の稼ぎに頼ってきた妻側にとっては切実な問題でしょう。

しかし、多少の我慢をしてでも家庭内別居を続けていれば、経済的な負担はかからずに済みますし、子どもにも余計な気苦労をかけずにこれまでどおりの暮らしをさせることができます。

◆世間体が守られる
また、人によっては、形式上だけでも夫婦という形を保っていることによって、世間体が守られることも大きなメリットでしょう。特に仮面夫婦状態を続けている人たちは、この点を重視して結婚生活を続けていると考えられます。

◆子どもと一緒にいられる
さらに、もし離婚となってしまった場合には、親権を獲得したどちらかが子どもと一緒に暮らすことになりますが、そうなってしまうと簡単に子供と会うことができなくなる可能性も出てきます。子どもと離れたくない人にとっては、家庭内別居のほうが良い選択と言えるでしょう。

家庭内別居を続けるデメリット

◆精神的に苦痛
別居と言いながらも同じ家に住んでいることには変わらないため、まったく相手の顔を見ずに過ごすことはほぼ不可能です。

「相手の顔も見たくない、声も聞きたくない、同じ空気も吸いたくない!」というほど関係が悪化してしまっている場合には、ほんの一瞬すれ違ったり、相手が視界の端を横切るだけでも、大きなストレスとなりかねません。

◆将来的に不都合が生じる可能性がある
こんな状態で生活をしていれば、やがて好きな異性ができることもあるでしょう。しかし、家庭内別居をしているとはいえ、離婚が成立していなければ法律上は夫婦ですから、好きな相手と交際をすることはおろか会うだけでも世間的には不倫とみなされてしまいます。

また、このまま家庭内別居が何年も続けば、当然お互いに年を取り、いずれは介護が必要になる時がやってきます。若いうちでも、ケガや病気などで身体が不自由になってしまうかもしれません。そうなれば、いくら大嫌いな相手でも夫婦である以上は面倒をみなくてはならないのです。

◆子どもに悪影響
両親が日常的に喧嘩ばかりしていたり、互いに避け合う様子を見て、何も感じない子どもなどいません。「まだ小さいからわからないだろう」というのは、大人の勝手な考えでしかないのです。子どもへの影響については、次項で詳しくお話したいと思います。

家庭内別居がおよぼす子供への影響

先ほどお話したように、子どものことを考えて、離婚ではなく家庭内別居を選択する夫婦は多くいます。

確かに、両親が離婚することによって子どもがさらされかねない偏見の目からは守ることは可能でしょう。しかし、両親が揃ってさえいれば問題ないということでは決してないのです。

子どもにとっては、両親が日常的に喧嘩ばかりしているのはもちろん、互いに口もきかず目も合さない、食事も一緒に食べない、同じ部屋にいない、といった両親の様子も非常に不安なもの。

日々の不安や心配によるストレスから体調を崩してしまったり、学校や外で問題行動を起こすようになる子も少なくありません。

また、両親の不仲を自分のせいだと考え、両親に対して過度に気を遣ったり、遠慮するといった子どもらしくない振る舞いを見せる子もいます。

そのような環境の中で育ってきた子どもは、自分の感情をうまく表現することが苦手になったり、他人の評価を気にしすぎるなど、大人になってからも対人面で苦労する可能性が高いと言われています。

このように、家庭内別居は、何の罪もない子どもたちから「家庭」というもっとも心安らぐはずの大切な場所を奪うだけでなく、今後の人格形成に悪影響をおよぼすことにもなりかねないのです。

家庭内別居をする前に決めておきたい最低限のルール

家庭内別居という形を取るのは、夫婦関係に何らかの問題があるからこそ。関係修復を目指すにしても、離婚をするにしても、お互いが冷静になって今後のことを考えなくてはなりません。

しかし、相手の姿を見るたびにイライラしていては、ストレスはたまる一方。これでは冷静になるどころではありませんし、子どもにとっても悪影響ですよね。

今のところは家庭内別居を続けていくと決断したのであれば、お互いが適度な距離感を保って生活するための最低限の”ルール”を話し合いで決め、自分たちにとっても子どもにとってもできる限りストレスがかからない工夫をすることをおすすめします。

顔すらも見たくない相手に対して話し合いをするなど酷な話かもしれませんが、子どものことを思うのならばなおさらです。

家事の役割分担を決める

夫婦関係がここまで破綻する以前には「妻なのだから/夫なのだから○○して当然」という気持ちも少なからずあったことでしょう。しかし、家庭内別居という形を取る以上は、過度に相手に期待すべきではありませんし、期待することがストレスを増長させてしまいます。

◆掃除
家庭内別居は、夫婦それぞれで寝室を分けているケースがほとんどだと思います。お互いの部屋の掃除はそれぞれで行うにしても、家族の共有スペースであるリビングやキッチン、バスルーム、トイレの掃除や、日々のゴミ出しなどはどうするのかを事前に話し合っておきましょう。

◆洗濯
洗濯物は私的な要素が強い物なので、できるだけ共有しないほうがストレスにならずに済みます。時間を決めてそれぞれで行う、どちらかがコインランドリーを使用するなど、お互いにとって納得のいく方法を決めておきましょう。

◆食事
「食べ物の恨みは恐ろしい」と言いますが、食事に関しては特によく話し合っておきたいところ。相手の分の食事を用意しないまま家庭内別居を続けていると、食費を請求できなくなってしまうケースもあるそうです。

食事の用意をする・しない、する場合にはどちらかに一任するのか・分担制にするのか、さらに食べる時間をどうするのか、食費はどちらがどれだけ負担するのか、といったことを、事前に決めておくようにしましょう。

生活費に関しての話し合いをしておく

顔も見たくないからといって相手を無視し続けていたり、相手のための家事を一切しないでいると、生活に必要なお金を相手に請求しにくくなってくる可能性があります。自分にそれなりの稼ぎがあれば別ですが、専業主婦であれば困ってしまいますね。

実際、夫婦関係が悪化してしまうと、次第に収入の多い方(多くの場合は夫)が生活費を渡さなくなるということも珍しくはないのです。

しかし、民法上では、婚姻関係にある夫婦は、結婚生活にかかる費用をお互いに分担することが求められています(第760条)。

このようなトラブルを避けるためにも、家庭内別居を始める前にはお金に関する話し合いの場をきちんと設けておくことをおすすめします。

もしトラブルが起こってしまった場合には、夫婦の収入の少ない方から収入の多い方に対して「婚姻費用分担請求(生活費の請求)」をすることが可能とされています。これは、夫婦生活がすでに破綻している場合であっても、婚姻中である限り認められます(例外を除く)。

子どものためにできることを考える

家庭内別居は、当事者である夫婦だけの問題ではありません。先ほどもお話したように、家庭内別居でもっともストレスを感じてしまうのは、不穏な状況にいながら何もすることができない子どもたちなのです。

親同士はできる限り顔を合わせたくないかもしれませんが、子どものストレスを少しでも軽減するためには、朝晩に最低限の挨拶を交わしたり、家族で食卓を囲む日を作ったり、子どもの学校行事に夫婦で参加するなど、様々な面でお互いに妥協することも大切です。

また、両親の不仲によって子どもがすでにストレスを抱えてしまっている場合には、体調を崩してしまったり、普段の行動に変わったところが見られることもあります。特に小さな子どもは言葉で訴えることができませんので、些細な変化を見逃さないように日頃から気を配るようにしてあげたいものです。

一線を越えるようなことはしない

相手に対する愛情が失われてしまっているのですから、他の異性に心が揺れ動いてしまうのも仕方のないことなのかもしれません。しかし、婚姻関係にある以上は、一線を越えるようなことは絶対に避けるべきです。

仮に離婚となった場合、家庭内別居中の不貞行為は圧倒的に不利。なぜなら、家庭内別居は世間的に「夫婦関係が破たんしている」と証明することが難しいため。夫婦関係が破綻していることが裁判で認められなければ、相手側から慰謝料を請求されてしまう可能性もあるのです。

まとめ

今回の記事では、近年増加していると言われている「家庭内別居」について詳しく解説してまいりましたが、いかがでしたでしょうか。

いくら愛し合って結婚した夫婦でも、元を正せば他人同士。育ってきた環境も、性格も、価値観も違う二人が生活を共にするのですから、意見が食い違うのは当然のことでしょう。

小さな食い違いの積み重ねで、あるいは一度の大きな食い違いで、家庭内別居に陥ってしまう可能性はどの夫婦にでもあるものです。

夫婦二人の生活ならば、気の済むまでとことん避け合うのも良いのかもしれません。しかし、子どもがいる場合には、夫婦の不仲を目の当たりにしてもっとも傷つくのは子どもなのです。

家庭内別居と離婚どちらが正解ということはないでしょうし、離婚に踏み切れずにいる理由がそれぞれにあるとは思いますが、親である以上は「子どもが安心して過ごせる場所」を作ってあげることを最優先に考えてあげていただきたいと思います。

最後までご拝読いただき、ありがとうございました。

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