「仕事ができない」「コミュニケーションが下手」「ストレスに弱い」などなど、世間では何かと批判の対象となることが多いゆとり世代。
良くない面ばかりがクローズアップされがちなゆとり世代ですが、中にはこの世代に当てはまる年齢というだけで周囲から誤解されて苦労している人もいるのかもしれません。
そこで今回の記事では、ゆとり世代にあたる人たちに対して、皆さんにも正しい認識を持っていただくべく、年齢層や特徴、さらに上手な付き合い方についてご紹介したいと思います。
職場でゆとり世代との接し方に悩んでいる人は、ぜひ参考にしてみてくださいね!
「ゆとり世代」とは?
現在では世間で広く使われている「ゆとり世代」という言葉ですが、実は明確な定義や範囲は存在しないのだそうです。
ただ、一般的には「 2002年度に施行された学習指導要領(ゆとり教育)から、2011年度に施行された学習指導要領(脱ゆとり教育)までの期間に、1年間でもゆとり教育を受けた世代」を指すことが多いようですね。
年齢でいうと、ゆとり世代にあたるのは1987年4月2日~2004年4月1日までに生まれた、2018年度に15歳~31歳を迎える人たちです。
「ゆとり教育」の目的
では、ゆとり教育とは、一体どのような目的で始まったのでしょうか。
1970年代までは、暗記によってとにかく知識量を増やす「詰め込み教育」が日本の学校教育の主流でした。
ところが、この教育方法は次のような問題を引き起こしたのです。
- テストを過ぎると暗記したことを忘れてしまう(剥落学力)
- 問題に対して「なぜそうなるのか?」と考える力が身につかない
- 受験戦争が過熱する一方、落ちこぼれ生徒によるいじめや校内暴力が多発
これらの問題への反省から、1980年代以降は偏差値重視の教育ではなく、生徒一人ひとりの個性を尊重し主体性を育むことに重点を置いたゆとり教育という概念が広まっていきました。
ゆとり教育で実施されたこと
ゆとり教育では、主に以下のことが実施されました。
- 学習内容を3割削減(小中学校)
- 授業時間の削減
- 完全学校週5日制の導入
- 「総合的な学習の時間」の新設
- 「絶対評価」の導入
ちょうどゆとり教育への転換期に学生時代を過ごしていた人たちにとって、もっとも衝撃的だったのは完全週5日制ではないでしょうか。
土曜日が休みになるのは隔週だった筆者は「いいなぁ・・・」と思ったものです(笑)。
【ビジネス編】ゆとり世代に見られる特徴
ゆとり教育の内容についてざっくりとおわかりいただいたところで、続いてはゆとり世代の人たちの行動や発言の特徴をご紹介していきたいと思います。まずは職場編からです。
世間では「仕事ができない」などと言われるゆとり世代社員ですが、その理由は一体どこにあるのでしょうか。
特徴①会社にかかってきた電話に出ない
ゆとり世代の新入社員のあるある行動としてよく挙げられるのがこのケース。
現在30代の筆者が新入社員だった頃は「電話を取るのは新人の仕事」という暗黙のルールがあり、入社初日から「電話は3コール以内に取ること!」と指導されたものですが、どうやらゆとり世代の人たちには通用しないようですね。
電話に出ないのは、「仕事に関する知識のない自分が出るだけムダ」と考えている、自分のやりたい仕事を最優先にしている、といった彼らならではの理由もあるようですが、携帯電話の普及によって固定電話に慣れていないという時代背景も関係しているといいます。
特徴②ストレス耐性がない
ゆとり教育が実施されると同時に、学校などに対して理不尽な要求を押し付ける、いわゆる「モンスターペアレント」」と呼ばれる親たちが目立つようになりました。ゆとり世代の人たちは、そうした両親のもとで過保護に育てられたといいます。
そのため、親や教師に叱られた経験がほとんどなく、社会に出てはじめて上司や先輩に叱られてショックを受けてしまう人が多いのだそうです。
中には、ちょっとキツめに叱られただけで仕事を辞めたいと申し出てきたり、次の日から突然出社しなくなる・・・なんてケースもあるようですよ。
特徴③指示待ち人間
ゆとり世代には、与えられた仕事しかできない、あるいはやらない、いわゆる「指示待ち人間」タイプが多いと言われています。
先ほどご説明したように、ゆとり教育とは子どもたちの主体性を育むことに重点をおいた教育方法だったはずですが、なぜ彼らは自ら行動を起こそうとしないのでしょうか。
これは、ゆとり教育によって、それまでの詰め込み教育の「苦労して勉強した人ほど高く評価される」という風潮がなくなったからなのだそうです。確かに、評価されないのであれば、わざわざ自分から苦労しようなどとは思えませんよね。
ただ、主体的に動くことがない一方で、与えられた仕事はきちんとこなそうとするのもゆとり世代社員の特徴だといいますから、上司や先輩の側が考え方を変えることでうまくいくのかもしれません。
特徴④すぐに答えが出ない問題が苦手
日本でインターネットが一般的に普及し始めたのは1990年代後半のこと。ゆとり世代の人たちが物心つく頃には、すでに家庭にパソコンがあったり、両親や兄弟が携帯電話を持っていたりなど、ネット環境が身近にあることが当たり前の時代でした。
そのため、彼らはパソコンなどインターネット機器の扱いに強い人が多いです。その点では上司や先輩から頼りにされる機会もありそうですね。
ただ、わからないことを上司や先輩に確認せずにネット検索で済ませようとしたり、ネット上で答えが見つからない問題を解決しようとしないなど、ネットに依存しすぎている人も中にはいるようです。
彼らは子どもの頃からGoogleなどの検索エンジンを使い、膨大な量の情報を簡単かつ瞬時に得る経験を重ねてきたため、答えがないものを自分の頭で一から考えることは苦手なのです。
特徴⑤プライベート重視
バブル崩壊後の不景気を目の当たりにして育ち、リーマンショックや就職氷河期を経験しているゆとり世代の社員には、会社の未来に希望が持てない人が多いのだそうです。
確かに、いつなくなるかもわからない職場に尽くそうとは思えませんよね。
そのため、彼らは仕事よりもプライベートを重要視する傾向が強く、残業よりも自分の趣味や友達と過ごす時間を優先しがち。
職場の人間関係も継続性のないものだと考え、割り切った付き合い方をしている人が多く、上司や先輩から飲みに誘われても平気で断ってしまいます。
「飲みニケーション」という言葉が流行った世代は、部下に飲みの誘いを断られるなんて驚きかもしれませんね。
特徴⑥昇進や昇給への欲がない
ゆとり世代には、昇進や昇給に対する意識が低い人が多いようです。
これもバブル後の不況下で育ったことが大きく関係しているのかしれませんね。先の見えない会社で努力を重ねて出世しようなどとは考えられないのでしょう。
今の仕事はあくまでも将来的なスキルを身につけるためだと考え、入社時から転職を視野に入れている人も少なくないそうです。
また、ゆとり世代は他人と競争や勝負をすることが苦手。
詰め込み教育の時代のように、テストの点数や偏差値で順位をつけられることがなくなったため、競争心が育たなかったのだといいます。
そのため、仕事でも「トップになりたい」「ライバルに勝ちたい」という気持ちがなく、中には成績が同期で最下位でも特に気にせず、のほほんとしている人もいるようです。
【恋愛編】ゆとり世代に見られる特徴
せっかくですから、ゆとり世代の恋愛傾向についても軽く触れておきましょう。
ゆとり世代は、恋愛に対する興味が薄いと言われています。
明治安田生活福祉研究所が2016年に行った調査では、次のような結果が出ています。
- 結婚願望がある
20代男性・・・39%(2013年は67%)
20代女性・・・59%(2013年は82%) - 恋人がいる
20代男性・・・5人に1人
20代女性・・・3人に1人 - 交際経験が一度もない(未婚者)
20代男性・・・53%(2013年は30%)
20代女性・・・34%(2013年は28%)
(※明治安田生活福祉研究所『第9回 20~40代の恋愛と結婚』より)
この数字を見ると、女性よりも男性のほうが恋愛への興味が薄いと言えそうです。最近よく耳にする「草食系男子」とはこの世代の男性たちに多いのかもしれませんね。
ゆとり世代との上手な付き合い方
ここまでゆとり世代と呼ばれる人たちに見られる特徴についてご紹介してまいりましたが、いかがでしたか?
彼らよりも少し上の世代の人たちは「自分たちとはこんなにも考え方が違っていたのか・・・!」と驚かれたのではないかと思います。
生まれた時代や育ってきた社会環境が違うのですから、価値観や考え方が違うのは当然のこと。彼らの先輩や上司にあたる皆さんは、自分たちが新入社員だった頃と同じような教育や指導の方法は通用しないと思っておいたほうが良いでしょう。
では、今後ゆとり世代の社員とうまく付き合っていくには、どのように接するべきなのでしょうか。
注意する時はやんわりと
ストレス体制がなく打たれ弱いゆとり世代。先輩や上司から少しでもきつく叱られると、自分の全人格を否定されたと勘違いして、すぐに退職を考えてしまいます。
彼らに注意をする必要がある時は、決して人間性を攻撃しているのではなく「業務に携わるうえで重要なことだから注意をしている」という姿勢を明確に示すようにしましょう。
また、声を荒げたり乱暴な言葉で叱るのも彼らを追い詰める原因となるので、なるべくやんわりとした優しい口調で伝えてあげると良いですね。
小さなことでも褒める
ゆとり教育では「生徒の個性を尊重する」ということが重要視されてきました。そのため、彼らを教育・指導するうえで「褒める」ということは非常に有効な手段です。
どんな小さなことでも構いませんので褒める場面を作って、自分の強みを自覚させて自信をつけてあげましょう。
逆にダメ出しばかりしていると、やる気をなくして退職を考えてしまう可能性があるので気を付けてくださいね。
精神論は通用しない
良くも悪くも合理的な考え方をする人が多いと言われるゆとり世代。「やればできる!」「なんとかなる!」といった精神論や、筋の通らない非論理的な意見には納得できません。
無茶な精神論を押し付けるのではなく、業務を遂行するための道筋を論理的に説明していくようにしましょう。
また、時には「あなたはどう思う?」と彼らにアイディアを求めるなどして相互コミュニケーションを図るのも良い方法です。
「ゆとり世代は使えない」と決めつけない
ゆとり世代は主体性がなく指示待ちタイプの人が多いといいますが、与えられた仕事は真面目にきちんとこなそうとします。
また、インターネット社会で育っているため、現代のパソコンを用いた業務への適性は先輩・上司にあたる人たちの世代よりも高いはずです。
「ゆとり世代だから〇〇ができない」と決めつけるのではなく、まずは彼らとじっくり向き合って意見や考え方を聞き、適性や強みを見出していきましょう。
まとめ
今回の記事では、ゆとり世代と呼ばれる人たちの年齢層や特徴、彼らとの上手な付き合い方についてご紹介してまいりました。
彼らの性格や価値観は、2002年から施行された「ゆとり教育」だけでなく、バブル崩壊後の不景気やインターネットの普及など社会環境からも影響を受けていると考えられますね。
繰り返しますが、生まれた時代や育ってきた環境がそれぞれ違うのですから、各世代で考え方が違うのは当然のこと。年長者が「最近の若者は・・・」などと嘆くのも、いつの時代も変わりません。
彼らとうまく付き合っていくためには、自分たちの頃と比べてダメだ、使えない、などと世代で判断するのではなく、自分たちとは違うのだということを認識したうえで、社会人としてどのように育てていくべきかを考える必要があるのではないでしょうか。
最後までご拝読いただき、ありがとうございました!